こんにちは。税理士の日高です。
法人企業の経営者様・経理担当者様に向け、税務調査対応のポイントをお伝えしています。

消費税の還付と税務調査について、この記事でお話しいたします。

消費税の還付を受けると、税務署で細かくチェックされる

「消費税の還付を受けると税務調査が来やすい」という噂を聞いたことはありますか?これは事実です。
消費税が還付となった場合、税務署では必ずその申告内容を細かくチェックしています。
高額な還付の場合には、実地調査を実施しますし、少額な還付であっても、申告内容に疑義があった場合には、関係書類の提出や電話等による確認を行います。
疑義が解消しない限り、還付は保留されます。

令和5年11月29日に国税庁HPで公開された「令和4年度 法人税等の実地調査事績の概要」のなかでも、国税当局が税務調査を実施する上で特に重要な取組として3つのテーマを挙げています。
重要とされる3つのうちの一つが消費税還付申告法人に対する取組です。

(参考)国税庁の主要な取組
〇消費税還付申告法人に対する取組
海外取引法人に対する取組
無申告法人に対する取組

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/hojin_chosa/pdf/01.pdf

 

消費税の還付とは

消費税は、「売上にかかる消費税等」から「仕入れにかかる消費税等」を差し引いて納付すべき消費税を算出します。したがって、「仕入れにかかる消費税等」が「売上にかかる消費税等」よりも多ければ消費税が還付されることとなります。

ただし、免税事業者や簡易課税の選択をしている事業者は還付を受けることはできません。

どういった場合に消費税が還付されるのか?

前述のとおり、免税事業者や簡易課税の選択をしている事業者は還付を受けることはできません。

では、どういった場合に消費税が還付されるか説明します。

  1. 売上に比べて給与、法定福利費、保険料、租税公課等を除く課税仕入れにかかる諸経費が多い場合。
    例えば、多額の修繕費を支払ったときなど。
  2. 多くの仕入を行ったが、売上が伴わず大量の在庫が残った場合。
  3. 高額な資産(建物、機械、車両等)を購入した場合。
  4. 売上先が海外の場合
    ※消費税は、日本国内において行われる商品の販売やサービスの提供に対して課税されます。したがって、輸出取引や国際輸送などの輸出に類似する取引として行う課税資産の譲渡等については、消費税が免税されます。(消費税は、外国で消費されるものには課税しないという考え)

消費税が還付となった場合に注意すること

消費税が還付となった場合、税務署では必ずその申告内容を細かくチェックしています。
高額な還付の場合には、実地調査を実施しますし、少額な還付であっても、申告内容に疑義があった場合には、関係書類の提出や電話等による確認を行います。疑義が解消しない限り、還付は保留します。
消費税が還付となった場合には、以下の点について注意しましょう。

  1. 仕入税額控除を行うには帳簿の記載と保存が要件となります。取引について帳簿に一定の記載と請求書等の保存がない場合には、仕入控除が認められません。
  2. 還付の原因が土地付きの不動産の購入・売買・賃貸借の場合、消費税の取扱いを慎重に検討してください。(原則的に土地に係るものには消費税が課税されません。)また、課税事業者か否か、課税売上割合、課税期間、調整対象資産の取得の有無等の検討も行う必要があります。
  3. 輸出免税の適用を受けるには、その取引が輸出取引となることについての一定の証明が必要です。また、関係書類は7年間保存しなければなりません。

大きな不正が発見された税務調査の事例

消費税還付法人に対して国税庁が行っている取組状況について解説しました。
ここからは、実際に行われた調査の中で大きな不正が発見された事例を紹介します。

【事例1】国内での仕入れ(課税)及び国外への売上げ(免税)を水増し計上する方法により、多額の消費税還付金を不正に受けようとしていた。

東京都にある会社は、都内の会社から高級化粧品などを約370億円で仕入れ、香港にある輸出会社約10社に販売したと税務申告を行ったが、税務調査の結果、実際に取引されていたのは化粧品ではなく、安価な飲料水だったことが判明した。

会社が約370億円とした仕入れは、実際には約30億円で、同社に過少申告加算税を含む消費税約35億円を追徴課税した。

【事例2】免税店における輸出免税制度を悪用して不正に消費税の還付を受けていた。

(調査内容1)大阪市内で時計や宝飾品の販売をする経営者は、大阪市の時計・宝飾品の中古買い取り販売店3社と共謀し、高級ブランド・ロレックスの腕時計などを仕入れ、外国人観光客らに免税販売したと見せかけるなどして、消費税など計約1億6600万円の還付を不正に受けようとしていた。

(調査内容2)東京国税局管内にある輸出物品販売場を経営する会社は、外国人旅行者に対して高級腕時計を多数販売(免税)したとして、多額の消費税還付申告書を提出していた。しかし、調査の結果、国内売上にもかかわらずブローカーが用意した協力者(非居住者)に対する免税売上に仮装していることが判明した。その結果、会社に対して重加算税を含む追徴税額約11億円を課した。

【事例3】取引実態がないにもかかわらず、国内での仕入れを装い架空仕入れ(課税仕入れ)を計上するとともに、国外への販売を装い架空免税売上げ(免税取引)を計上する方法により、不正に消費税の還付を受けようとしていた。

 (調査内容1)川崎市にある会社は取引事実がないにもかかわらず、代表者から高級腕時計371点を約178億円で仕入れたように装い、虚偽の納品書を作成し架空仕入(課税取引)を計上するとともに、香港でのオークション販売を装い架空輸出売上免税取引を計上する方法により、不正な還付を受けようとしていた。

(調査内容2)大阪国税局管内のバイク用品(ヘルメット)の輸出等を行っていた会社は、休業状態になり全く事業を行っていないにもかかわらず、国内の業者からの架空仕入(課税取引)を計上するとともに国外の業者への架空輸出売上(免税取引)を計上する方法により、不正に多額の消費税の還付を受けていた。

インバウンド増加に伴う消費税還付制度の不正利用と国税当局の対策

消費税においては、近年の訪日外国人旅行者(インバウンド)の増加や免税店(輸出物品販売場)の増加を背景に、免税店における輸出免税制度を悪用して不正に消費税の還付を受けようとする者が増加しています。また、海外への売上を装う不正な消費税還付も後を絶たない状況です。

国税当局は、消費税の還付申告書が提出された場合、還付を一旦保留した上で徹底した申告内容の精査(調査)などを行い、不正な消費税還付が生じないよう対策を講じています。

消費税の還付を受けようとする方へ

適法に計算した結果、消費税申告書により還付請求となったとしても、それが適法に計算されたものであれば何も心配することはありません。
ただし、消費税の申告にあたっては、専門的な知識も必要ですし、一旦間違いが発見されると追徴税額も多額となることも少なくありません。
消費税の還付を受ける場合は、税理士へ相談することをお勧めします。

税務署から税務調査の連絡があった方へ

税務署からの税務調査に関する事前通知は、通常は顧問税理士あてにあります。
万が一、直接会社に連絡があった場合には、
落ち着いて次の事項を伝え聞きメモなどしておいて顧問税理士にお伝えください。

1.税務調査で予定している日時、調査日数や調査官の人数
2.税務調査をする理由
3.調査官の役職や所属部署

また、無予告で突然税務調査が来る場合もありますが、最近では税務職員のなりすましもいます。必ず身分証の確認を行いましょう。身分証明書は、顔写真付きで所属税務署、所属部門・課、官職が記載されていて、質問検査章には調査できる税目が書いてあります。(当然、質問検査章に記載されていない税目は調査することはできません。)

税理士法人武内総合会計では、税務調査の立ち会いも対応しております。
もし顧問税理士がいないのに税務調査が来てしまった等
お困りのことがありましたらご相談いただければ幸いです。

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