こんにちは。国税OB税理士の占部です。
今日は、「筆跡」についてのお話です。

現在はかなりパソコン等の機器が発達し、ちょっとした文章も「Word」等を使って作るようになりました。見た目はきれいですが個性がなくなって、書道を習っていた自分からすると少し寂しい感じがします。

注文伝票の筆跡から判明した売上の計上漏れ

ベテラン調査官から教えてもらったことですが、飲食店の調査時に通常お客様が飲食店に入って注文を取るときに注文伝票にボールペンで注文を記載し、厨房に回して経理で保管しているわけですが、通常売上日ごとにまとめて閉じています。

この伝票をよく見ると直前の注文の筆跡が残ります。
これを並べ替えると何枚か筆圧が残っているのにその伝票が綴られていない時があるのです。

代表者に了解を得てその伝票を濃い鉛筆で擦ってみると閉じられていない伝票が浮かび上がります。

つまり売り上げが漏れていることになります。

元帳と領収書の筆跡から判明した架空計上

次の事案は私が経験したのですが、ある時珍しく手書きの元帳の会社にお邪魔した時でした。

領収書綴りを検討したところなんとなくどこかで見た字の領収書に手が止まりました。

そうです、元帳の字でした。

少し字体を変えた形跡はありましたが、筆圧がほとんど同じでした。

コクヨの領収書、現金で支払われたこともあり架空の費用であると確信しました。

代表者に「この業者さんは存在しませんよね。」と領収書を提示したところしばらく黙っていましたが、「どうしてわかったのですか。」と聞かれ「筆跡です。元帳の字と同じですよね。」との質問に「すみません、私が経理担当に指示し作成したものです。」と認めました。

人間の手は嘘がつけないものですね。

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