令和5年10月1日からインボイス制度が導入されます。
買い手側は、消費税の仕入税額控除を適用するにはインボイスを保存する必要があります。
今回は「銀行の振込手数料等」の取り扱いについてお話いたします。
この投稿でわかること
・銀行窓口やインターネットバンキングの振込手数料等の取り扱いは?
・ATMや両替機の手数料の取り扱いは?
・売り手が振込手数料を負担する場合のインボイスの取り扱いは?
窓口での振込手数料等とインボイス制度
Q:窓口での振込等の手数料についてインボイスを保存する必要はある?
A:インボイスを保存する必要があります。振込等に係る手数料は消費税の課税対象となり、窓口の振込手数料等にはインボイスの交付義務が生じ、利用者はその手数料に係るインボイスの保存が必要となります。
インターネットバンキングでの振込手数料等とインボイス制度
Q:インターネットバンキングの振込等の手数料についてインボイスを保存する必要はある?
A:インボイスを保存する必要があります。振込等に係る手数料は消費税の課税対象となり、インターネットバンキングの振込手数料等にはインボイスの交付義務が生じ、利用者はその手数料に係るインボイスの保存が必要となります。
ATMや両替機の振込手数料等とインボイス制度
Q:ATMの振込手数料についてインボイスを保存する必要はある?
A:保存義務なし。ただし、帳簿の保存が必要です。(利用したATM等の設置場所の住所を記載)
3万円未満のATMの振込手数料等については、インボイスを交付することが困難な為、交付義務が免除されています。この場合、利用者はインボイスの保存の代わりに一定事項を記載した帳簿の保存で仕入税額控除を受けられます。帳簿には支店名の記載は不要、住所は市区町村名等の記載でよいことから、番地の記載までは不要と考えられます。 従来通りATMを利用することで振込を証する証票が交付されることも考えられますが、仕入税額控除を受けるに当たっては保存不要です。
簡易インボイスの対象業務
Q:銀行の主な業務には、預金業務・融資業務・為替業務が挙げられ、その他にも多くの業務があります。簡易インボイスの対象となる業務もありますか。
A:不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う事業については、適格請求書に代えて、適格請求書の記載事項を簡易なものとした適格簡易請求書を交付することができます。
主な事業は下記のとおりです。
①小売業
②飲食店業
③写真業
④旅行業
⑤タクシー業
⑥駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限ります。)
⑦その他(※これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業 「不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業」であるかどうかは、個々の事業の性質により判断します。)
銀行取引において、相手方の氏名等を確認していることが多いようですが、「取引条件等をあらかじめ提示して相手方を問わず広く資産の譲渡等を行う」ことが常態の商品・業務も多く存在している為、簡易インボイスの交付が可能なようです。
(例)店頭やホームページに手数料を提示したうえで、銀行制定の帳票を使って行う振込・各種届出等の手続きに係る手数料。
「売り手が振込手数料を負担する場合」の対応
振込手数料については、買手が負担する場合だけでなく売手が負担するケースもあります。
※令和5年9月訂正
この記事を最初に投稿した令和4年8月時点では、返還インボイスの交付が必要であるとお伝えしていました。(以下の打消し線部分)
しかし、令和5年4月の税制改正において、少額な返還インボイスの交付義務の見直しが行われました。
事務負担を軽減する観点から、少額な値引き等(1万円未満)については、返還インボイスが不要になりました。
【参考】国税庁:令和5年4月発行 消費税インボイス制度に関する改正について
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/pdf/0023002-106.pdf
この場合の対応は、主に3パターンに分類されます。
01.売上に係る対価の返還等として処理する
売手は振込手数料相当額の売上値引きを行ったとして処理することになり、買手に対して返還インボイスを交付する必要があります。
返還インボイスには、下記の記載が必要です。
・売上に係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等の内容
・売上に係る対価の返還等の金額(=振込手数料相当額)
・消費税額等
02.買手からの役務提供と整理し、仕入明細書対応を行う
買手が振込手数料を差し引いてきた場合、次回の請求に当たり、手数料相当額の役務、つまり振込により決済を受けるという役務提供を受けたとして、買手に対して仕入明細書を交付し、売手が仕入税額控除を受けます。この場合、買手がインボイス発行事業者であり、かつ、その仕入明細書につき買手の確認を受けることが必要です。
03.買手が振込手数料を立替払したとして処理する
買手が、本来売手が負担すべき振込手数料を立替払したと整理します。売手は、買手が銀行から受領した振込手数料に係るインボイスと立替金精算書を買手から受領し保存することで、仕入税額控除を受けられます。この場合、買手が差し引く金額は振込手数料に係るインボイスに記載された金額となります。なお、買手が売手に交付するインボイスが大量となるなどの理由で交付困難な場合は、立替金精算書の保存をもって売手が仕入税額控除を受けられるなどとされています。
ATMでの立替払は精算書不要
03.の立替払において、買い手がATMを利用して振込を行った場合、
帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能となります。
その為、ATMの手数料について売手が仕入税額控除を行う場合には、
立替金精算書の保存が不要です。
この場合、
売手は以下について確認のうえ「帳簿のみ保存の特例」の適用を受けることになります。
・買手が差し引いた金額が振込手数料であること
・立替での支払がATMでの振込によるもの
ご不明な点などございましたら、お気軽にお問合せください。
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