国税OBであり、”税務調査専門の税理士”梅野です。

国税庁Webサイトには、
各国税局での新型コロナウイルス感染者の発生について公表しています。
5月に入ってから、福岡国税局、熊本国税局の新型コロナウイルス感染者が
毎日のように発生している状況です。
国税庁Webサイト:新型コロナウイルス感染症に関する対応等について

税務調査は、国税通則法に規定されている税務職員による質問検査権の行使です。
その質問検査権について、最高裁は

質問検査の範囲、程度、時期、場所等、実定法上特段の定めのない実施の細目については、
右にいう質問検査の必要があり、かつ、
これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり、
権限ある税務職員の合理的な選択にゆだねられているものと解すべきである。」

旨判示しました。

国税調査官の質問検査権は罰則を伴う強力な権限であり、
その行使に当たっては慎重さが要請されます。
通常税務調査は、経済取引を中心に複雑多岐にわたる事象や行為を対象としていること
及び調査対象者の個々の事情への配慮を行いながら臨機応変かつ的確に実施されるべきです。
国税の職場にて調査事務を長年経験した私にとって、
上記判示は調査を実施するうえで基本的な考え方で、常に調査の必要性を考慮しました。

このような新型コロナウイルスの感染が拡大している状況下で、
税務調査を実施することは双方にとって、非常に困難が伴います。

納税者は、家族に高齢者、持病を持った者がいる方もいらっしゃいます。
調査する方も職場で新型コロナウイルスに感染した職員と接触した、
家族が感染し濃厚接触者となったなど発生することがあり、
その都度調査の延期等が生じます。

色んなケースが考えられますが、
「相手方の私的利益の衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり」とあることから、
新型コロナウイルス感染の不安がある状況下において、
税務調査を実施することは難しいと思います。

また、福岡国税局の職員録を見ますと、
各税務署の部門の構成は半数以上が経験の浅い財務事務官であること。
また、新型コロナウイルスの感染拡大でここ2年間はほとんど実地調査の経験がありません。
私の記憶には先輩や同僚を交えて調査のことをあれこれ話をして、
こういう場合は何をどのように調査するとか検討・協議して教えてもらっていました。
このようにして調査能力を高め実践することで自信がつき、満足のいく調査を実施しました。
しかし、調査経験が少ない現在の職員の状況を見ますとこれで調査事務が遂行できるか
少し疑問が残り、調査経験が少ないため
税務職員の資質(調査能力)にも影響があるのではと危惧しています。

今後、新型コロナウイルスの新規陽性者の動向は不明ですが、
7月以降、税務署の調査は徐々に以前と同じような状況で調査が実施されると思います。
その際は、税務職員は強力な質問検査権に基づいて調査を実施することとなりますので、
納税者の個々の事情に配慮した調査を行って欲しいと願います。

私たち税理士も納税者の意をくみ、不安なことがないように調査対応をしたいと思います。

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