こんにちは。税理士法人武内総合会計です。

令和5年10月1日からインボイス制度がはじまります。

今回は、インボイス制度を理由として、
免税事業者と取引条件を変更する場合に留意すべき事項

取り上げたいと思います。

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この記事でわかること

免税事業者との取引条件を変更する場合は独占禁止法上の「優越的地位の濫用」や下請法上、問題となるおそれがあること。

例えば、インボイス制度を理由とした取引対価の引き下げ・受領拒否・返品・協賛金等の負担の要請・購入や利用の強制・取引停止・登録事業者となるよう過度な要求等には、場合によっては「優越的地位の濫用」として問題となり得るので気を付けること。

取引価格等について再交渉する場合には、売り手と十分に協議を行い、買い手の都合のみで低い価格を設定する等しないよう、注意する必要があること。

個別のケースで懸念点がぬぐえない場合は公正取引委員会の相談窓口へご相談を。

 

独占禁止法「優越的地位の濫用」

一般的に取引上の地位が優越する買い手が、相手方である売り手にその取引上の地位を利用して、売り手に対し不当に不利益を与えることは、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」として問題となるおそれがあります。

仕入先である免税事業者との取引について、インボイス制度の実施をきっかけに取引条件を見直すこと自体が、直ちに問題となるものではありませんが、条件変更に当たっては、独占禁止法や下請法上の罰則規定もありますので、優越的地位の濫用に該当する行為とならないよう注意が必要です。

特に、令和11年9月30日までは、免税事業者からの仕入れでも一定割合を仕入税額控除として認められる経過措置があります
にもかかわらず、消費税10%相当額を取引価格から引き下げることを一方的に通告することは、仕入税額控除が制限される分を超えて、取引価格を引き下げることとなり、独占禁止法や下請法上問題となるおそれがあります。

「優越的地位の濫用」として問題とならないために気を付けること

では、優越的地位の濫用として問題とならないようにするため、どのようなことに気を付けるべきでしょうか。
以下では、買い手が取引上の地位が優越すると仮定した上で、問題となりそうなケースをご説明いたします。

01.取引対価の引き下げ

買い手が、インボイス制度の実施後、
仕入税額控除ができないことを理由に、
売り手(免税事業者)に対して取引価格の引下げを要請し、
取引価格の再交渉において、仕入税額控除が制限される分について、
売り手の仕入れや諸経費の支払いに係る消費税の負担をも考慮した上で、
双方納得の上で取引価格を設定すれば、
結果的に取引価格が引き下げられたとしても、
独占禁止法上問題となるものではありません。

しかし、再交渉が形式的なものであり、
買い手の都合のみで著しく低い価格を設定し、
売り手が負担していた消費税額も払えないような価格を設定した場合には、
優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題
となります。

02.商品・役務の成果物の受領拒否、返品

買い手が、売り手から商品を購入する契約をした後において、
売り手が免税事業者であることを理由に、
商品の受領を拒否
することは、
優越的地位の濫用として問題となります。

また、同様に、当該売り手から受領した商品を返品することは
・「どのような場合に、どのような条件で返品するか」について当該売り手との間で明確になっておらず、当該売り手にあらかじめ計算できない不利益を与えることとなる場合
・その他正当な理由がないのに当該売り手から受領した商品を返品する場合
には、優越的地位の濫用として問題となります。

03.協賛金等の負担の要請

買い手が、インボイス制度の実施をきっかけに、売り手に対し、取引価格の据置きを受け入れるが、
その代わりに、買い手に別途、協賛金、販売促進費等の名目での金銭の負担を要請することは、
当該協賛金等の負担額及びその出根拠等について、当該仕入先との間で明確になっておらず、
当該売り手にあらかじめ計算できない不利益を与えることとなる場合や、
当該売り手が得る直接の利益等を勘案して合理的であると認められる範囲を超えた負担となり、
当該売り手に不利益を与えることとなる場合には、
優越的地位の濫用として問題となります。

その他、取引価格の据置きを受け入れる代わりに、正当な理由がないのに、発注内容に含まれていない役務の提供その他経済上の利益の無償提供を要請することは、優越的地位の濫用として問題となります。

04.購入・利用強制

買い手が、インボイス制度の実施をきっかけに、
売り手に対し、取引価格の据置きを受け入れるが、
その代わりに、当該取引に係る商品・役務以外の商品、
役務の購入を要請することは、
当該売り手が、それが事業遂行上必要としない商品、役務であり、
又はその購入を希望していないときであったとしても、
優越的地位の濫用として問題となります。

05.取引の停止

事業者がどの事業者と取引するかは基本的に自由ですが、
例えば、買い手が、インボイス制度の実施を契機として、
売り手に対して、一方的に、
免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格など著しく低い取引価格を設定し、
不当に不利益を与えることとなる場合であって、
これに応じない売り手との取引を停止した場合には、
独占禁止法上問題となるおそれがあります。

⑥ 登録事業者となるような過度な要求等

課税事業者が、インボイスに対応するために、
買い手に対し、課税事業者になるよう要請することがあります。
このような要請を行うこと自体は、
独占禁止法上問題となるものではありません。

しかし、課税事業者になるよう要請することにとどまらず、
課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げるとか、
それにも応じなければ取引を打ち切ることにするなどと
一方的に通告することは、独占禁止法上又は下請法上、
問題となるおそれがあります。

例えば、売り手が取引価格の維持を求めたにもかかわらず、
取引価格を引き下げる理由を
書面、電子メール等で売り手に回答することなく、
取引価格を引き下げる場合は、これに該当します。

また、売り手が、当該要請に応じて課税事業者となるに際し、
例えば、消費税の適正な転嫁分の取引価格への反映の必要性について、
価格の交渉の場において明示的に協議することなく、
従来どおりに取引価格を据え置く場合についても同様です。

したがって、売り手との間で、取引価格等について再交渉する場合には、売り手と十分に協議を行っていただき、買い手の都合のみで低い価格を設定する等しないよう、注意する必要があります

懸念点がぬぐえない場合は公正取引委員会の相談窓口へ

「言いたいことはわかるが、この場合はどうすればいいのか。」という疑問が生じることもあると思います。懸念点がぬぐえない場合は公正取引委員会において相談窓口を設けられておりますので、そちらまでご相談をされることをお勧めいたします。

出典:公正取引委員会等「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ &A」(https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/invoice_qanda.html

 


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