2024年10月の衆議院選挙を通して、国民民主党の玉木雄一郎代表が掲げた「国民の手取りを増やすための178万円の壁」という政策がニュース等で大きな話題を集めました。
経営者の皆様におかれましては、従業員の働き方に大きく影響を与える重要な事項であり、ご心配されていることと存じます。
2024年11月時点では法案が提出されており、実施が確定している政策ではありませんが、今後実施された場合の変更点や注意点、影響についてご紹介します。
また、顧問先以外の方から本記事および税金等に関するご質問いただいても、当社では回答できません。
ご理解の程、よろしくお願いいたします。
「178万の壁」政策実施による変更点について
具体的な政策内容としては、所得税の課税基準である控除額(基礎控除と給与所得控除の合計額)の上限を103万円から178万円に変更するというものです。1995年に導入された「103万円の壁」ですが、30年経過し地域別最低賃金が上昇したことにより、その上昇率(約1.73倍)を根拠に178万円という金額が設定されています。
変更前(現行)
基礎控除48万円、給与所得控除55万円 合計103万円
変更後(政策内容)
基礎控除48万円 → 123万円、給与所得控除55万円 合計178万円
「178万の壁」政策実施による注意点について
この政策では、所得税の課税基準の見直しを図るものとなっていて、社会保険料の加入基準である「106万円の壁」や「130万円の壁」、住民税の課税基準である「100万円の壁」を変更するものではありませんので注意が必要です。
「178万の壁」政策実施による労働者や事業所への影響について
この政策が実施されることによって、考えられる労働者や事業所への影響をご紹介します。
①労働者がより柔軟な働き方を選択できる。
上述のように所得税の課税基準が変更されることによって、それまでの年収を103万円以下に抑える働き方から、生活資金に困ったときや時間に余裕があるときはいつもより多く働くなど多種多様な状況に対応した働き方が可能になります。
②事業所の人手不足の解消
近年サービス業などの人手不足が話題となっていますが、この変更によって既存の従業員がより長時間働くことができるようになり、人材確保に困る可能性が低くなることが見込まれます。
③社会保険加入による保障の充実
上述のように、現時点では社会保険の加入基準の変更予定はありませんので、178万円の壁を意識した働き方をすると、社会保険の加入対象になる可能性があります。手取りは一時的に減少しますが、加入により将来受け取ることができる年金受給額が増加します。また、医療保険においては、ケガや病気で会社を休んだ時に「傷病手当金」、産前産後休業期間中に「出産手当金」を受け取ることが可能です。
④配偶者や扶養者への影響
扶養の中で働いている方にとっては、本人(被扶養者)の手取りが増える一方で、配偶者控除や社会保険の加入基準は変更されていないので、扶養者の手取りが減る可能性があります。
今回は、年収の壁ついてご紹介しました。
今回の政策によって所得税制に大きな改革が起こることが予想されます。
従業員様のうち、特にパート・アルバイトの方々にとっては、より収入を得ることができるようになる一方で、社会保険料や住民税、その他の税制控除など考慮しなければならない課題が残っています。
今後、政府がどのような改正を行っていくか、ますます注目されます。