OB税理士の占部です。
まもなく年末調整の時期を迎えます。サラリーマンの方は給与をもらっているため、お勤めの会社に年末調整の関係書類の提出をすれば、ほとんどの方が一年間の精算を終えます。
税務調査官時代、この「給与」という科目でかなりの不正計算を把握した経験があります。(※個人の情報を守るため、主旨はそのままに、実際の出来事から一部変更を加えています。)
税務署の組織で特別国税調査官という部門があります。税務署が管轄する比較的大きな規模の法人の調査を担当する部署ですが、通常二人で調査に臨場し手分けして内容を検討し不審点を抽出して調査を進めていきます。調査選定時に長期間調査で接触していない法人があり、調査に着手することとしました。小売業ではありましたが、売上はテナントとして入居しているデパートやスーパーのレジを通さないといけないため、売上の問題は考えにくいので、原価及び経費を中心に検討することとしました。
人件費の占める割合が高かったため、賃金台帳を見ていると明らかに高額な給与の女性が3名ほど目に留まりました。
・経理部長より高額な給与であること。
・毎月の給与月額支給額が100万円のラウンド(端数がない)数字。
・配席表に氏名の記載がない。また、机の空きもない。
以上の事実に基づいて代表者に説明を求めたところ、取扱商品等の市場調査や従業員の顧客への対応ぶりの社内調査を交通費込みでお願いして給与を支給しているとの説明でした。すぐに確認調査を行い、当該人物の居住地を訪れて玄関のチャイムを鳴らしますが全く出てきません。
早速代表者に3名に連絡して本社に呼び出すように伝えましたが、後日税理士が、「申し訳ないが代表者が3名に合わせることができないとのこと。修正申告を提出するので。全額不正所得として処理していただいて構わない。」と申し出がありました。その後調査を進めましたが、業界の権力者の名前が出てきました。(代表者の前職の社長でした。)権力者から代表者に3名の生活費の支払いを依頼されたようです。
日頃お世話になっている人の頼みはなかなか断ることはできないと思いますが、危険性を考えたうえで対応することにしましょう。