令和8年6月、国税庁ホームページに「令和7年度 査察の概要」が公表されました。

「令和7年度 査察の概要」では、査察調査の概要や令和7年度の査察事績、重点事案への取組、不正資金の留保・費消状況、査察事件の一審判決の状況などが紹介されています。

さて、今回はこの査察調査がどのような流れで進んでいくのかを解説します。

 

査察調査(マルサ)とは

「査察調査」は国税局査察部が行う強制調査です。
いわゆる「マルサ」と呼ばれ、一般的な税務調査とは異なり、隠ぺい工作などが疑われる悪質な脱税者や高額な脱税者を対象に、法律に基づく強制力によって証拠を収集し、刑事責任を追及します。

査察調査の仕組みや、令和5年度の査察事績、具体的な脱税事案などについては、以前の記事で詳しく解説しています。

▶ 「査察調査状況」はこちら

また、一般的な税務調査については、こちらの記事をご覧ください。

▶ 「令和5年度 法人税等の実地調査事績の概要」はこちら

 

査察調査の着手まで

査察調査を行う国税査察官は、強制調査を着手するまでに、調査対象者の周辺調査を数か月から1年以上をかけて徹底的に行い、十分な脱税の確証を得た上で調査に着手します。具体的には、預貯金状況の調査、関連会社や取引先の調査、調査対象者の尾行や監視による日常行動の把握、長期間にわたる自宅や事務所、店舗その他関係先の張り込みなどがあります。

事前の周辺調査は秘密裏で行われ、査察官が長期間家を留守にする際も家族でさえその行先は知りません。

査察調査の実施

査察調査は、納税者の意思にかかわらず実施される「強制調査」であり、裁判所からの令状が必要です。

裁判所から許可が下りると、査察官は会社、事務所、自宅、関連先等の場所へ臨場し、犯則嫌疑者(調査対象者)の身体や所持品を調べ、建物に立ち入って捜索を行い、帳簿やパソコン等を証拠物件として差し押さえます。通常これらの初動調査はガサ入れと呼ばれ、時には数百人に及ぶ査察官によって行われます。もちろん、強制調査ですので調査を拒否することはできません。

査察調査は、絶対的な秘密厳守で行われますので、調査当日まで調査対象者や調査場所は限られた査察官しか知りません。多くの査察官が調査当日になって初めて調査対象者や調査場所を知るということも珍しくありません。

査察調査での取り調べ

ガサ入れが終了したら、押収した証拠書類等を基に本格的な調査が始まり、同時に犯則嫌疑者に対しては長期間にわたる取り調べが行われます。平均では6か月間程度でしょうが、場合によっては1年以上かかることもあります。取り調べでは調書を取られ、最終的には修正申告書等(無申告者の場合は期限後の申告書)の提出で終了となるのが一般的ですが、中には、修正申告等に応じず、更正処分を受ける場合もあります。査察調査で特に高額・悪質な脱税事案と判断されると刑事処分が相当とされ検察庁に告発されます。令和7年度は、査察調査処理件数127件のうち82件(64.6%)が告発されています。以前は、刑事告発されるのは、脱税額が3年間で1億円というのが目安でしたが、最近では1億円以下の脱税額でも告発されています。また、令和7年度の告発された脱税事案の総額は84億円で1件当たりの脱税額は1億200万円でした。

告発後、検察庁による捜査へ

告発されると、脱税行為が刑事事件として検察庁に引き継がれます。検察庁から呼び出しがあり、取り調べ等の捜査が終了した後、裁判となります。

国税局での査察調査である程度証拠が固まっている上、すでに自白している(修正申告提出済み)場合が多いため在宅による捜査及び裁判が一般的ですが、逃亡の恐れがある場合や罪証隠滅の恐れがある場合には、逮捕されることもあります。例えば、脱税を否認している場合、共犯者が複数人いる場合、捜査に協力的でない場合です。なお、査察の告発により起訴された場合の第一審の有罪率は、ほぼ100%です。 最終的には、拘禁刑や罰金という刑事罰を受けて終了となります。

査察調査を受けないために

査察調査を受ける納税者は限られていますが、毎年130~150件程の査察調査が実施されているのも事実です。一旦、査察調査に入られると金銭的なダメージを受けるとともに、拘束される時間も長期間に及びます。また、マスコミ等で報道され社会的な制裁も受けます。決して、査察調査を受けることがないよう日頃から適正申告に努めましょう

また、査察調査とは別に、税務署による一般的な税務調査が行われることもあります。
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