こんにちは。福岡市中央区の税理士法人武内総合会計です。

グループ内に赤字会社を抱える社長や、M&Aを検討している経営者様から、節税のために黒字の会社と赤字の会社を合併させたい、というご相談をいただくことがあります。

結論からお伝えすると、条件さえクリアすればグループ企業内での税負担が軽減される可能性があります。

しかし、税務署も「節税目的だけの駆け込み合併」には非常に厳しい目を光らせています。やり方を間違えると、節税どころか多額の追徴課税を受けるリスクがあります。

 

今回は、組織再編で後悔しないために、社長が押さえておくべき「適格合併(てきかくがっぺい)」の基本と注意点をわかりやすく解説します。

※本投稿は、できるだけわかりやすいよう、簡易的に記載しています。

詳細は国税庁Webサイトをご確認いただくか、顧問税理士にお尋ねください。

 

1.「適格合併」と「非適格合併」

会社を合併する場合、税務上は大きく分けて「適格合併」と「非適格合併」の2つに分類されます。

適格合併: グループ内の整理など「実質的に事業がそのまま引き継がれる」と認められる合併です。資産や負債を帳簿価額のまま引き継ぐ(譲渡損益を出さない)ため、課税を繰り延べることができます。

非適格合併(通常の合併): 合併によって資産や負債を「売買(譲渡)」したとみなされます。含み益がある資産を持っている場合、そこに税金がかかってしまいます。

つまり、赤字会社との合併で税務上のメリットを受けたい場合、「適格合併」の要件を満たすことが大前提となります。

 

2.「赤字の引き継ぎ」は簡単にできる?

多くのお客さまが勘違いされやすいのが、「適格合併をすれば、赤字会社の過去の赤字(繰越欠損金)をそのまま黒字会社の利益と相殺できる」という思い込みです。

実は、税務署は「節税目的で赤字会社を買収・合併すること(欠損金の買い取り)」を警戒しているため、適格合併であっても、赤字を引き継ぐにはさらに厳しい条件を課しています。

主なチェックポイントは以下の通りです。

① 完全親子会社(100%グループ)か、それ以外か

100%グループ内で5年以上の継続関係がある場合などは、比較的スムーズに赤字を引き継げます。

設立や買収から5年未満の会社を合併する場合、急にハードルが上がります。

② 「事業の関連性」や「事業規模」のバランス

5年未満のグループ会社や他社を合併する場合、以下のような実体が必要です。

・合併する2つの会社の事業に関連性があること

・売上高や従業員数などの事業規模が極端に離れていないこと(例:100倍以上の規模差がある赤字会社を吸収するようなケースではないこと)

「ペーパーカンパニーのような赤字会社を買ってきて合併する」といった手法は、通用しない仕組みになっています。

3.税務署が見ている最大のポイント

「事業目的」要件を形式的にクリアしていても、安心はできません。税法には「行為計算の否認」という、税務署長に認められた強力な権限規定が存在します。

簡単に言えば、「形式上はルール通りでも、明らかに税金を減らすためだけの不自然な合併だと判断された場合、税務署の裁量でその節税を無効(否認)にできる」ということです。

 

税務調査で問われるのは、「その合併に、経営上の合理的な理由(事業のシナジー、コスト削減、経営統合など)があったかどうか」なのです。

 

赤字会社との合併は、単なる節税目的だけ行うと非常に危険です。

形式的な要件を満たすだけでなく、「なぜこの2社が統合するのか」という経営上の合理的な理由(シナジー効果)を明確にしておくことが、税務リスクを避ける最大のポイントです。

 

次回公開の【後編】では、「社長が事前に準備しておくべき重要書類と対応策」等について解説します。

 

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