皆様、こんにちは。福岡の税理士法人武内総合会計です。

7月も下旬に入り、街中や駅、空港なども夏休みモードの活気が感じられるようになってきました。お盆休みを前に、出張のスケジュールを前倒しでこなされている経営者の方も多いのではないでしょうか。

ビジネスにおいて、遠方への出張は切っても切り離せないものです。交通費や宿泊費など、出張が増えればそれだけ会社の経費も膨らみます。 しかし、この「出張制度」を上手に活用することで、【会社の節税】と【社長・社員への手取りアップ】を同時に実現できる魔法のような仕組みがあることをご存知でしょうか。

それが、社内ルールとして定める「出張旅費規程(しゅっちょうりょひきてい)」です。 今回は、夏休みや秋のビジネスシーズンを前に、ぜひ見直しておきたい「旅費規程」のメリットと導入のポイントを解説します。

  1. 「出張旅費規程」がもたらす3つの強力なメリット

出張旅費規程とは、社員や役員が出張した際に、交通費や宿泊費、そして「日当(出張手当)」をどのように支給するかをあらかじめ定めた社内ルールのことです。 この規程を正しく作成し、運用することで、主に3つのメリットが生まれます。

メリット①:支給した「日当」が、会社の経費(損金)になる

規程に基づいて社長や社員に支給した日当は、会社の「旅費交通費」として全額を経費(損金)に算入できます。これにより、法人の利益を圧縮し、法人税を軽減することができます。

メリット②:受け取った人(社長・社員)には税金がかからない(所得税・住民税が非課税)

通常、会社からお金をもらうと「給与」や「賞与」扱いになり、所得税や住民税が課税されます。しかし、税法上、適正な範囲内の「出張日当」であれば、受け取った個人の所得税・住民税は一切かかりません。 さらに、給与ではないため、社会保険料の計算対象からも除外されます。つまり、会社も個人も1円も損をすることなく、個人の「手取り」を増やすことができるのです。

メリット③:消費税の節税にもなる

出張旅費規程に基づいて支給する日当や宿泊費は、消費税の計算上「課税仕入れ」として扱うことができます。つまり、会社が納めるべき消費税を減らす効果もあります(※海外出張の日当などは対象外となります)。

  1. 具体的にどれくらいの効果があるのか?(シミュレーション)

例えば、社長が月に4回、地方へ1泊2日の出張(計8日間)をするとします。 規程で「社長の日当:1日あたり5,000円」と定めていた場合、

  • 5,000円 × 8日間 = 月額 40,000円(年間 480,000円)

この48万円は、会社の経費になりつつ、社長個人のポケットに所得税・住民税の負担なく入ることになります。もしこれと同等の手取り額を「役員報酬」の増額で実現しようとすると、所得税・住民税・社会保険料が上乗せされるため、会社側は実質60万〜70万円以上のコストを負担しなければなりません。その差額がそのまま節税効果となります。

  1. 税務調査で否認されないための「3つの絶対条件」

これだけメリットが大きい制度であるため、税務調査でも必ず厳しくチェックされます。導入にあたっては、以下の条件を確実に満たしておく必要があります。

条件①:必ず「出張旅費規程」を文書化し、株主総会や取締役会で決議しておく

口約束や、社長のその場の思いつきで日当を支払うことは認められません。必ず全社的なルールとして規程を作成し、議事録を残しておく必要があります。

条件②:金額が「常識的な範囲内(世間相場)」であること

「社長の日当を1日10万円にする」といった極端な設定は、税務署から「役員への事実上の賞与(利益処分)」とみなされ、否認されます。 一般的な相場としては、役職に応じて以下のような範囲で設定するのが安全です。

  • 社長・役員:3,000円 〜 5,000円程度(宿泊を伴う場合は5,000円〜10,000円程度)
  • 一般社員 :2,000円 〜 3,000円程度

条件③:「出張報告書」などの客観的な証拠を残す

本当にその出張が行われた証明として、「出張報告書(目的地、面談相手、成果などを記載)」を作成し、領収書や新幹線の半券、ホテルの宿泊証明書などと一緒に保管しておく必要があります。

まとめ:夏休み・下半期に向けて会社の「規程」を整備しませんか?

出張旅費規程は、特別な裏ワザではなく、国が認めている正当な節税・福利厚生の仕組みです。にもかかわらず、中小企業の中には「手続きが面倒そう」「身内だけの会社だから不要」と、未だに導入していないケースが少なくありません。

特にこれから秋にかけてビジネスが活発化する時期、出張の機会が増える企業様にとっては、今この夏のタイミングで規程を作っておくことが、大きなコスト削減に繋がります。

「自社の場合はいくらくらいの日当が妥当か?」「規程の雛形が欲しい」といったご要望がございましたら、いつでも当事務所までご相談ください。貴社の事業規模や実態に合わせた、税務上も適切な旅費規程の作成をサポートいたします。
※具体的な規程作成や税務判断に関するご相談は、顧問契約や個別相談をご検討中の方に限らせていただいております。あらかじめご了承ください

それでは、皆様も体調管理に気をつけながら、充実した夏をお過ごしください。