こんにちは。税理士法人武内総合会計です。
今回は、倒産等により取引先から債権(売掛金等)を回収できなくなった場合の取り扱いについてお話しします。
※本投稿は、できるだけわかりやすいよう、簡易的に記載しています。
詳細は国税庁Webサイトをご確認いただくか、顧問税理士にお尋ねください。
中小企業白書によると2010年以降倒産件数は減少傾向にありましたが、2024年の倒産件数は10,006件と、コロナ渦禍以降再び増加に転じているそうです。
人件費や物価をはじめとしたコスト高騰が原因の倒産が増えています。
武内総合会計でも税務監査において「取引先から売掛金の回収ができない」「行方不明になっている」「破産手続きに関する書面が弁護士から届いた」などの相談を受けることはしばしばあります。
売掛金の入金が遅れれば、督促や内容証明の発送、信用調査などあらゆる手段で回収を試みると思いますが、それでも回収できない場合会社にとっては損失が発生します。
このように債権を回収できない場合に発生する損失を「貸倒損失」といいます。
売掛金の場合、売上に計上した年の所得に加算されて納税しているわけですから、回収できないのであればすぐに取り消して経費にしたい。または黒字の年度に経費にしたい、。と思うのも無理はありません。
しかしながら、貸倒損失として経費にできる(損金処理できる)のは、一定の要件を満たし、回収不能が明らかになった事業年度に限られます。
■貸倒損失を計上できるのは以下の場合です。
①法律上の貸倒れ(取引先について以下の事実が発生した場合)
・法的整理(会社更生、民事再生、特別清算等)による債権の切り捨て
・債務者の債務超過状態が相当期間継続し、債権の弁済を受けられない場合に、書面で明らかにされた債務免除額
②事実上の貸倒れ
債務者の資産状況、支払能力等から見て、全額が回収できないことが明らかになった場合に、その事業年度で貸倒として損金経理した場合
③形式上の貸倒れ
一定期間取引がない場合等に売掛債権について備忘価額を控除した残額を貸倒損失として損金経理した場合
②は破産手続きの廃止決定又は終結決定が出た場合や債務者が行方不明の場合
③は継続的な取引を行っていた取引先で、取引停止から1年以上経過した場合や、売掛金の額が取り立てのために要する旅費などの取立費用よりも少なく、支払を督促しても弁済がない場合 が該当します。
※「損金経理」とは法人がその確定した決算において費用又は損失として経理することをいいます。
■貸倒損失として処理できる時期
貸倒損失処理ができるのは、回収不能が明らかになった事業年度とされていますが、
①法律上の貸倒れでは、回収不能が明らかになった事業年度に処理しなかった場合でも、その後、更正の請求によって損金処理することができる可能性があります。
しかし、②事実上の貸倒れ 、③形式上の貸倒れ については、その後の事業年度で貸倒処理することは難しいです。
会社にとって損失であるにもかかわらず、計上時期が適切でないために損金処理できないのは納得しがたいことです。
適切な時期に貸倒処理するために、破産の場合は“弁護士や裁判所からの連絡文書”を。行方不明の場合は“宛先不明で戻ってきた請求書とその封筒”などを、取引停止から1年以上経過した場合は“取引先との取引履歴と督促の履歴”などをきちんと保管しておきましょう。
税法上の貸倒損失は、税務調査で争われることが多い案件です。判断に迷う場合は、顧問税理士に相談するようにしましょう。
税務・会計・経営・相続・事業承継に強い税理士をお探しの方は、武内総合会計へご相談ください。