こんにちは。税理士の日高です。
法人企業の経営者様・経理担当者様に向け、税務調査対応のポイントをお伝えしています。

今回は、先日公開された「令和4年事務年度における法人税等の実地調査実績」の資料を参考として、「法人消費税」についてお話しいたします。

▼法人税についてはこちらの記事をご確認ください▼
法人税の実地調査実績の概要(令和5年11月28日国税庁公表)

 

この記事でわかること

  • 調査対象となる期間
  • 法人消費税の実地調査の件数は急増。今後もコロナ禍前の水準まで増加すると思われる。
  • 消費税の還付申告法人に対する実地調査は、コロナ禍前と比較して88.7%まで件数が回復している。
  • 国税当局は「消費税還付申告法人」に対して厳正な調査を行う方針
  • 消費税還付申告法人への調査1件あたりの追徴税額は、法人税調査全体の1件あたりの追徴税額3,010千円を大きく上回っている

調査対象となる期間

令和4事務年度における法人税等の調査事績が、令和5年11月29日付で国税庁のHP上に公表されました。
令和4事務年度の調査事績は、令和4年2月1日から令和5年1月31日までの間に事業年度が終了した法人を対象に、令和4年7月から令和5年6月までの間に実施した調査に係るものです。

消費税の実地調査の件数は急増

まず、法人税調査と同時に行われる消費税の実地調査の件数ですが、前年対比152.2%増の61千件数と急増しています。
これは、新型コロナの沈静化に伴い前年より調査件数が増加したものです。

しかし、新型コロナが発見される前の平成30年度の調査件数は、99千件であり、未だその当時に比べて61.6%の調査件数であることから、今後も新型コロナの影響を考慮した上で調査件数は増加するものと思われます。

税務調査より間違いを指摘された非違件数は、35千件と全体の調査件数の57.3%を占めており、前年同様、調査を受けた半数以上の法人で誤りが発見されています。

調査1件あたりの追徴税額は2,231千円で前年対比102.7%と増加しています。

重加算税の対象となる不正な非違が発見された割合は、18.0%で前年対比▲2ポイントとわずかに減少していますが、それでも5件のうち1件弱で不正が発見されており、決して低い割合ではありません。

消費税還付申告法人に対する取組は、国税当局が特に力をいれている

国税当局が税務調査を実施する上で特に重要な取組として3つのテーマを挙げていますが、そのうち一つが消費税還付申告法人に対する取組です。

  1. 消費税還付申告法人に対する取組
  2. 海外取引法人に対する取組
  3. 無申告法人に対する取組

国税当局は、消費税の不正還付はいわば国庫金の詐取ともいえる悪意性の高い行為だとして、還付申告を行った法人に対しては特に厳正な調査を実施しています。

消費税還付申告法人に対する実地調査の件数ですが、前年対比136.6%増の5,810件と急増しています。新型コロナが発見される前の平成30年度の調査件数6,553件に対して88.7%の回復状況(法人税調査は61.6%)ですので国税当局の本気度が伺えます。

税務調査より間違いを指摘された非違件数は、3,588件と全体の調査件数の57.3%を占めており、前年同様、調査を受けた半数以上の法人で誤りが指摘されています。また、不正な還付も931件発見されており、その追徴税額は、1件当たり14,776千円と非常に高い金額となっています。

調査1件あたりの追徴税額は9,690千円で前年対比110.9%と増加しています。この調査1件あたりの追徴税額は、法人税調査全体の1件あたりの追徴税額3,010千円を大きく上回っており、今後も徹底した調査が行われることが考えられます。

過去3か年分の法人所得税の実地調査の状況

なお、過去3か年分の法人消費税の実地調査の状況及び消費税還付申告法人に対する実地調査の状況は、下の表のとおりです。

過去3年分 法人消費税の実地調査の状況

事務年度 令和2 令和3 令和4
実地調査件数 1 千件 千件 千件
25 40 61
非違があった件数 2 千件 千件 千件
16 24 35
うち不正計算があった件数 3 千件 千件 千件
5 8 11
非違割合(2/1) 8
76.2 60.0 57.4
不正発見割合(3/1) 8
20.0 20.0 18.0
調査による追徴税額 4 億円 億円 億円
729 869 1,357
うち不正計算よる追徴税額 5 億円 億円 億円
178 309 390
調査1件当たりの追徴税額(4/1) 9 千円 千円 千円
2,972 2,173 2,231
不正1件当たりの追徴税額(5/3) 10 千円 千円 千円
3,313 4,081 3,718

 

過去3年分 消費税還付申告法人に対する消費税の実地調査の状況

事務年度 令和2 令和3 令和4
実地調査件数 1
3,066 4,252 5,810
非違があった件数 2
2,073 2,877 3,588
うち不正計算があった件数 3
510 791 931
非違割合(2/1) 8
67.6 67.7 61.8
不正発見割合(3/1) 8
16.6 18.6 16.0
調査による追徴税額 4 億円 億円 億円
219 372 563
うち不正計算よる追徴税額 5 億円 億円 億円
34 111 138
調査1件当たりの追徴税額(4/1) 9 千円 千円 千円
7,143 8,738 9,690
不正1件当たりの追徴税額(5/3) 10 千円 千円 千円
6,676 14,083 14,776

税理士法人武内総合会計
〒810-0073 福岡県福岡市中央区舞鶴2丁目8-20
TEL:092-781-0251(代表)/FAX:092-781-0353

サービス内容:
税務顧問、相続税・財産管理、税務調査、事業計画サポート
資金調達支援、会社設立支援、アウトソーシング、
IT支援業務、事業承継コンサルティング等

サービス提供エリア:
福岡県、宮崎県、鹿児島県、その他九州各地
※その他のエリアの場合もご相談ください。