今回はインボイス制度が始まった後、クレジット決済した領収書やカード会社からの明細書の取り扱いについての注意事項を、お話しします。

今まではクレジットカード明細のみの保管でも問題はなかった(3万円未満)

キャッシュレス化が進む中、経費や納税でクレジット決済をつかい、日々の経理処理をしやすい様にしている方も多いと思います。
ただ、クレジットカード会社からの明細だけでは、原則、消費税の仕入税額控除が出来る書類には該当せず、カード決済時の「ご利用明細」や「領収書」等が必要なのは、ご存じの方も多いと思います。
それでも今までは、3万円未満であればクレジットカード会社の明細のみの保管であっても帳簿を保存していれば問題はありませんでした。

インボイス制度開始後はどうなる?

インボイス制度開始後は、この3万円未満であれば、「ご利用明細」等がなくても大丈夫という規定が無くなるため、一般課税の課税事業者は、紙や電子データの領収書の保管が必須となります。

少額取引に係る事務負担の軽減措置(令和11年9月迄)

令和5年度の改正で「中小事業者の少額取引に係る事務負担の軽減措置」もでていますが、条件付き、かつ令和11年9月30日迄の措置となっています。

その条件とは、以下に該当する事業者であれば、税込価額が1万円未満の取引きについては帳簿のみの保存で仕入税額控除を認めるというものです。

  1. 基準期間(前々年度または前々事業年度)の課税売上高が1億以下の事業者
  2. 特定期間(前年または前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間)の課税売上高が5,000万円以下の事業者

本当に小規模の事業者に対しての特例措置です。
意外とこの特例措置に該当しない中小の事業者は多いのではないでしょうか。

ETCでも「利用証明書」が必要となる

「事務負担の軽減措置」に該当する事業者でない場合、ETCカードを使った高速料金でも証憑が必要となります。

飲食代や事務用品など、色々な経費をクレジットカードで決済しますが、高速料金も同様です。
そして、上記の「事務負担の軽減措置」に該当する事業者でない場合、高速料金が1万円未満でも、このETCカードの「利用証明書」が必要となります。

よくあるクレジットカード会社発行のETCカードの場合、WEB上の「ETC利用照会サービス」において、「利用証明書」(PDF)を電子適格簡易請求書として交付されるので、それを電子データ保存する事になります。

「ETC利用照会サービス」を使う為には、事前にETCカード毎の登録が必要ですが、登録前にETCカード自体を使っていないと登録できず、事前にたくさんの情報を用意して登録する必要があり、中々の手間です。

そして、毎月、「利用証明書」(PDF)をダウンロードする作業が、カードの枚数分、必要となります。(過去15ヶ月分確認可能。)

<参考>
【外部サイト】適格請求書等保存方式(インボイス制度)開始に伴う高速道路のご利用について(https://corp.w-nexco.co.jp/newly/r4/1227/)
【外部サイト】ETC利用照会サービス(https://www.etc-meisai.jp/)

この様な作業は、ネットで商品やサービス等を購入する場合も同様の作業が必要となります。

≪追記:令和5年9月≫

上記のクレジット決済のETCカードに係るインボイス対応について令和5年9月15日に国税庁が、事務作業を緩和する柔軟な運用方針を示しました。

原則的には、上記の記載通りではあるが、「利用証明書」の取得・保存が困難な場合、個々の高速道路利用の内容がわかるETCクレジットカードの「クレジットカード利用明細書」(高速道路の利用に係る内容が判明するものに限り、取引年月日や取引の内容、対価の額が分かる利用明細データ等を含む)と、「利用証明書」はその利用した高速道路会社等ごとに1回のみダウンロードして併せて保存することで、仕入税額控除が認められるとした。

例えば、西日本高速道路(株)を利用しその任意の1回分の「利用証明書」を取得・保存しておけば、その後同社の高速道路を利用した際に同社の「利用証明書」を取得する必要はないということ。
つまり、各道路会社べつに必要となります。

また、組合が組合員(高速道路の利用者)にETCクレジットカ-ドを交付し、高速道路代金の精算等を行っている場合も同様の対応となります。

組合が「クレジットカード利用明細書」と高速道路会社等ごとの任意の1回利用分に係る「利用証明書」を併せて保存して、且つ「組合が組合員に精算書を交付し、組合員が精算書を保存」することで、組合員は仕入税額控除ができるようになります。

今回、ETCカードのクレジット決済については事務作業を緩和する運用方針が示されました。

ただ、現時点では、それ以外の商品やサービス等をクレジット決済で購入する場合、原則的な作業が必要なのは変わりません。

インボイス制度が始まり、いろいろな事柄が出てくると思います。そして、必然的にそれに対応するための運用方針が出てきますので、その動きを見逃さない様にするのが肝心です。
インボイス制度開始後には、この他にも様々な注意事項があります。

ご不明な点がありましたら、インボイスコールセンター(インボイス制度電話相談センター)0120-205-553又は顧問税理士へ相談することをお勧めします。


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