こんにちは。税理士法人武内総合会計です。
今回は「租税法律主義」と「租税公平主義」についてお話いたします。
租税法の基本原則
我が国では、日本国憲法第30条にて「納税の義務」を定めており、これにより私たちは納税の義務が生じます。
税に関する決まりごとは複数の法で定められており、その法を総称して「租税法」と呼びます。
そして、租税法の基本原則となるのが「租税法律主義」と「租税公平主義」です。
租税法律主義
日本国憲法は第84条において、
「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と規定しています。
この条文から租税の賦課・徴収は法律に基づくことなしには、
国民は租税の納付を要求されないということがいえます。
つまり、その賦課・徴収は必ず法律に基づいて行わなければならないという考えを「租税法律主義」といいます。
租税を課すことは国民の財産を侵害することになるため、国民の財産権の保護と国民の経済生活に「法的安定性」と「予測可能性」を与える必要があります。
そのため、租税法律主義の内容として、主に以下の4つをあげることができます。
1.課税要件法定主義
課税要件のすべてと租税の賦課・徴収の手続きは法律によって規定されなければならない。
2.課税要件明確主義
課税要件および租税の賦課・徴収の手続に関する定めを為す場合に、その定めはなるべく一義的で明確でなければならない。
3.合法性の原則
課税要件が充足されている限り、租税行政庁には租税の減免の自由は無く、また租税を徴収しない自由もなく、法律で定めたとおりの税額を徴収しなければならない。
4.手続的保障原則
租税の賦課・徴収は公権力の行使であるから、それは適正な手続で行われなければならない。
(出典:日本税理士会連合会「大学生向け講義テキスト-標準版-」)
租税公平主義
租税公平主義は、日本国憲法第14条第1項をその根拠としています。
日本国憲法第14条1項では
「すべて国民は、法の下に平等であって、
人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、
政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」旨が規定されています。
そのため、租税公平主義は
担税力(租税を負担する経済的能力)に即して公平に配分されなければならず、
各種の税法律関係において国民は平等に取り扱われなければならないという原則といえます。
租税公平主義では、
税負担は各人の担税力に応じて配分されますが、
担税力の基準としては「所得・財産(資産)及び消費」の3つをあげることができます。
ただ、消費は担税力の尺度としては最も劣っており、
所得及び財産は累進税率の適用が可能であることから、税の負担の配分に優れています。
租税公平主義は、担税力に応じた課税により、
負担能力の大きい人にはより大きな負担をしてもらう垂直的公平、
等しい能力のある人には等しい負担を求める水平的公平ないし中立性が導かれます。
租税法律主義と租税公平主義の衝突
納税者の財産権の保護を内容とする租税法律主義と
納税者を税の理念で等しく取り扱うべきであるとする租税公平主義は、
どちらも租税法における重要な基本原則になりますが、
課税庁は租税公平主義を重視する傾向にあります。
そのため、司法の場で争われることも多々あります。
有名な事例として武富士事件やオウブンシャ・ホールディング事件、ヤフー事件などがあります。
このうち、武富士事件は贈与税の納税義務者の判定要件である住所の認定の問題が争点となった事例で、
最高裁は税逃れ目的の海外居住であったとしても課税することは違法と判決を出しています。
最高裁判所の裁判官は理由として
「租税法律主義という憲法上の要請の下、法廷意見の結論は、
一般的な法感情の観点からは少なからざる違和感も生じないではないけれども、
やむを得ないところである。」※と述べていることから、
租税法律主義が優先されていると考えられます。
※第一法規法情報総合データベース 判例ID28170244
オウブンシャ・ホールディング事件、ヤフー事件などに関しては機会があれば解説したいと思います。
今回は、確定申告時期を終えて税に興味を持った方に向け、
税の基本的な考え方である「租税法の基本原則」についてお話いたしました。
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