こんにちは。税理士法人武内総合会計です。
2024年の年末から議論が続いていた「年収103万円の壁」問題。
2025年3月に2025年予算案が衆議院を通過し、103万円の壁は限定的ですが最大160万円まで引き上げられることが決定しました。
この「160万円の壁」について解説したいと思います。
1.改正のポイント
2025年1月1日に遡って、以下のような改正が施行されました。
・給与所得控除の最低保障額:55万円 → 65万円(給与収入金額190万円以下の場合)
・基礎控除:48万円 → 58万円~最大95万円(所得に応じて段階的に適用)
この改正により、所得税が課税される年収の基準が103万円から最大160万円に引き上げられました。
具体的には、年収123万円以下であれば原則として所得税が課税されず、年収850万円まで段階的に基礎控除が適用されます。
2.103万円の壁と160万円の壁の比較(改正された範囲)
項目 | 改正前(~2024年) | 改正後(2025年~) |
給与所得控除 | 55万円
(年収162.5万以下) |
65万円
(年収190万以下) |
基礎控除 | 48万円 | 最大95万円 |
所得税が課税されない年収 | 103万円以下 | 160万円以下 |
基礎控除が段階的に減少する年収 | 103万円超 | 160万円超850万円以下 |
3.160万円の壁のしくみとは
基礎控除:95万+給与所得控除:65万=160万・・この金額までは税額がかからない
160万円の壁のポイントは「年収に応じて非課税枠が引き上げられる」点です。
年収ごとに基礎控除の上乗せ額が設定され、年収が低い人ほど控除額は大きくなります。
基礎控除に関しては、令和6年末の政府与党案の基礎控除58万に、各年収額で控除の上乗せ額が変わります。
その上乗せ部分の200万3,999円以下(上乗せ額:37万円)は、令和9年以降も継続ですが、200万3,999円を超える収入金額は令和7年~令和8年の2年間のみの上乗せとなります。
また、基礎控除は200万3,999円以下は最大の上乗せ額(計95万円)ですが、給与所得控除は190万以下までが65万、190万超からは改正前の控除額に戻ります。
【例】給与の年収200万円の場合
給与所得控除の計算:200万円×30%+8万円=68万
基礎控除:95万
200万-(基礎控除:95万+給与所得控除:68万)=37万の給与所得
☝所得税が課税される
注意点
・給与計算:令和7年分の給与の源泉徴収事務は例年通りに行い、年末調整で今回の改正を適用します。令和8年からは改正に対応した源泉徴収税額表が発行される予定です。
・住民税の非課税基準:給与所得控除の変更はありますが、住民税の基礎控除額の変更はありません。一般的には年収110万円以下で非課税となります。詳細はお住まいの自治体の公式サイトで確認してください。
・社会保険の加入基準:年収106万円を超えると、勤務先の従業員数や労働時間などの条件により、社会保険への加入義務が生じる場合があります。詳細は勤務先の人事部門や年金事務所に確認してください。
今回の改正により「160万の壁」だけでなく、「特定親族特別控除」の創設や扶養親族等の所得要件の改正が行われています。
給与計算や年末調整が複雑怪奇に感じると思います。
上記に関するご質問は、顧問税理士または所轄の税務署にお問い合わせ・相談するのが良いかと思います。
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