石破総理は4月22日、ガソリン価格について、現行の燃料油価格激変緩和事業を組み直し、10円/ℓ引き下げる措置を5月22日から取ることを表明しました。これにより、ガソリン価格は現在の185円前後の水準が175円程度となります。重油・灯油についても最近の補助実績を超える5円の引き下げを実現し、航空機燃料についても4円引き下げることを表明しました。
その一方で、2024年12月に自民党、公明党、国民民主党の3党の幹事長によって合意されたガソリン税の旧暫定税率の廃止の方針については、現在も廃止の時期は明示されていません。
そこで今回は、みなさんにとってとても身近なガソリンについてお話しします。
ガソリン代の内訳
みなさんが支払っているガソリン代の内訳は主に以下のようになっています。
- ガソリンの本体価格
- ガソリン税(本則税率)・・・7円/ℓ
- ガソリン税(暫定税率)・・・1円/ℓ
- 石油石炭税・・・8円/ℓ
- ①~④にかかる消費税
仮に税込175円/ℓのガソリンを30ℓ給油した場合、①~⑤は以下の金額になります。
- ガソリンの本体価格 → 3,075円
- ガソリン税(本則税率) → 861円
- ガソリン税(暫定税率) → 753円
- 石油石炭税 → 84円
- 消費税 → 477円 合計 5,250円
つまり本体価格部分は58.6%、なんと41.4%(2,175円)が税金で構成されていることになります。
ガソリン税の暫定税率とは?
そもそもガソリン税の暫定税率はどうしてできたのでしょうか。導入の経緯は戦後までさかのぼります。戦後、高度経済成長期を迎えた日本は、道路やインフラの整備が必要不可欠でした。その整備や保守の財源として1954年にガソリン税が導入されました。その後、1973年、「第7次道路整備計画」を進める際に、さらなる予算を確保するための「サポート」的な財源としてガソリン税の暫定税率が導入されました。
しかし、2008年に道路特定財源を「一般財源化」することを政府は決定しました。つまり、ガソリン税やガソリン税の暫定税率による税収が道路整備以外の財源としても使用されるようになったということです。当初の整備や保守の目的から外れた今もなお存在するため、暫定税率は不要なのではないかという議論がなされています。
トリガー条項とは?
みなさんはトリガー条項という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。トリガー条項とは、「一定の事例が発生した場合に自動的に税率の変更や歳出の削減等の措置が実施される法律の規定」を言います。
これは、2010年に設けられたもので、具体的にはガソリン代の全国平均価格が3ヶ月連続で160円/ℓを超えた場合に暫定税率を廃止し、3ヶ月連続で130円/ℓを下回れば暫定税率を復活するという内容です。軽油に課税される軽油引取税についても連動するように設定されています。
しかし、2011年の東日本大震災を受け、復興財源を確保するために適用を停止(トリガー条項を凍結)することとなりました。
その後、2021年から現在までトリガー条項の凍結を解除するための議論がなされていますが、現時点ではまだ平行線をたどっている状況のようです。
今回は、ガソリン税についてお話ししました。厳密には計算が異なる部分がありますが、ざっくりとした計算でいうと、5月から始まる10円/ℓの補助金による値下げよりも、25.1円/ℓの暫定税率の廃止による値下げの方が、15.1円/ℓガソリン代が安くなります。ガソリン税は国民の生活にとても大きな影響を及ぼす税金の1つでもありますので、政府や各党のこれからの動きに注目です。
引用:「揮発油価格高騰時における揮発油税及び地方地方揮発油税の特例税率の適用廃止等について」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/kansetsu/9120.pdf